北大路は個室を主体にした会席料理店です。空間デザインのポイントは、素材感を大切にすること。主に木、土、和紙などのソフトな自然素材を多用している。素材を主役にして、余計なデザインはしないで、自然素材がもっている表情やおもしろさを最大に引き出すことでした。
カウンターには新木場で出合った樹齢350年を超す栃の無垢材を使用している。あえて樹皮を落としただけの耳部分を残すことで自然な温かみを伝えている。柱に使用した福島産の欅は製材したところ虫食いの跡が露呈。不自然な補修をすることはしないで、それもまた自然素材のひとつのシーンとしている。壁面を創る割材パネルは柱やカウンターを製材する際に出た端材を短冊状にしたり、また輪切りにしてハンマーで割ってユニークな空間を創るアイテムにしている。芸術性はもちろんのこと、木を無駄なく使うことでエコロジーにも配慮している。壁には、版築という型枠に土を突き固めて積み上げて壁を創る伝統技法を採用して土の存在感と柔らかさを表現している。